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　冬将軍がなかなか立ち去らない中、山形県が進める「雪プロジェクト」が節目を迎えようとしている。なぜ今さら雪なのかといぶかられそうだが、高齢化が進み、もはや待ったなしの状況なのだという。プロジェクトを通じて評価された各種の試みを検証する。（本間篤）　　山形県は昨年１０月、産学官民で雪対策のネットワークを構築する「やまがたゆきみらい推進機構」（会長・大場好弘山形大工学部長）を設立し、県の村山総合支庁北庁舎に「雪プロジェクト推進」の３人からなる専従チームを置いた。　　背景には、高齢化によって除雪が困難になる世帯が増え、さらに、昔から伝えられた雪下ろしなどの技術が途絶えかけている現状がある。　　加えて、災害の側面も見逃せない。この冬の雪による死者は山形県内で８人に上っている（２８日現在）。村山総合支庁の山口秀雄地域振興監は「被害者は台風に比べても多い。危機管理の最たるもの」と強調する。　　　こうした視点から絞ったテーマが「屋根の雪下ろし」と「宅地内の雪処理」。雪下ろしについては、豪雪地のベテランが解説したＤＶＤを作製、県内３５の全市町村に配布する予定だ。　　宅地内や、除雪車が道路から掃き寄せた雪の処理には「流雪溝」が役立つが、雪で詰まるなどして効果が上がらないケースも少なくない。大石田町では県と協力し、延長約１３キロに及ぶ流雪溝を整備。さらに、住民参加による独自の管理体制で成果を上げている。　　まず、流雪溝への排雪を、除雪車が出動した日、時間帯も１日３回に限定。機械で大量に捨てることも認めない。スムーズに流れているか、４人の監視員が巡回する。費用は住民から会費を徴収してまかなっている。　　流雪溝利用協力会連合会の榎本正夫会長は「初めはトラブルもあったが、みんなの意識が変わってきた」と評価。住民からは「雪のない地区への移転も考えたが、流雪溝ができたので家を新築した」といった声まで聞こえる。「流雪溝が冬の暮らしを変えた」がキャッチコピー。県は先進事例としてＰＲしている。　　　しかし、大石田町は恵まれたケース。最上川からポンプで水をくみ上げ、流雪に利用するという国の事業があったから可能だったので、都市部では水利権の関係もあり、冬は側溝に水が流れていないところが多い。　　そうした地区で普及を目指しているのが、埋め込んだ水槽の温湯で雪を処理する「融雪槽」。降雪地では「出勤前の１０分間で玄関から道路までの雪を片づける」ことが切実な願望だが、それを可能にする。しかし、設備が１００万円近くと高額で、燃料費もかかるのがネック。県は村山市などでコストダウンを図る実証実験を行っている。　　　県道沿いに住宅が密集している村山市袖崎地区では１月２７日、宅地と道路の一斉除排雪が実験的に行われた。これは、ロータリー車による県道の排雪に合わせ、住民も家の雪を道路に出し、一緒に処理してしまおうという試み。約１キロにわたって朝から通行止めにし、８２戸が参加した。　　予想以上の雪が出て、運搬用のダンプカーが当初３台だったのを７台に増強し、夕方にやっと終了した。ロータリー車は県の費用、ダンプは住民が負担したが、住民の反応は上々だった。　　同市の板垣晃地域専門員は「所帯によって屋敷内の雪を出す能力に差が出るなどの課題は残ったが、今後も自信を持って取り組めると感じた。住民の助け合いの必要も明らかになり、コミュニティーの強化にもつながり得る」と評価した。　　それぞれの地区に適合した対策が求められているといえそうだ。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　◇　　　■雪に伴う事故　雪下ろしや落雪による死傷者はこの冬、山形県内で７５人（うち死者は８人、２８日現在）。原因別でみると、屋根などからの転落と落雪、除雪機によるものが目立っている。近年では平成１６年度が　１６１人（うち死者１１人）、１７年度　２８３人（同１３人）、１８年度１３人（同なし）と、雪が多い年ほど多くなる傾向がある。